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2005年7月 9日
スリッパの秘密

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平さん愛用のスリッパコレクション
お気に入りのお店は東京の蒲田商店街にある。
1000円以上のスリッパは高額で手がでないとのこと

メンタルでは、平さんの三種の神器というと、アロハにズボンつり、スリッパであるといわれています。
「なぜ、いつから、私の靴がスリッパに変わったのか?」という質問を多くの方からいただくのですが、それに対していちいち説明するのに疲れてしまいましたので、ここに書き残しておきます。

今から4年前。この年の夏、私は生まれて初めて、左足に魚の目というものをつくってしまい、そのうえ、その左足をかばいながらセミナーでダンスをしたときに右足をねんざしてしまったのです。
ただでさえ太く大きい私の右足が靴もはけないくらいに腫れ上がったため、このときに初めてスリッパをはいて、とっても恥ずかしい思いをしながら、東京から神戸に帰ってきました。
「とっても恥ずかしい思いをしながら…?」何をいまさら・・・と私を知っている人は思うかもしれませんが、実は、それ以前まで、よくスリッパをはいて当社に出勤していたのは、康良くん(北端トレーナーのこと)だったのです。銀行員あがりの私は常々これを苦々しく思っておりました。

いい年になった若者が夏とはいえ、スリッパで出社するというその人をなめたような行為、そして、「人からいったい何と思われるのか、おまえはわかっているのか?」という憤り。「け、け、けしから?ん」と常々苦々しく思っていたのですが、立場が弱い社長ゆえ、いつも「涼しそうでいいねぇ」とものわかりがよさげで懐の深い社長像を演じておりました。
それまで、常々スリッパをはく人を軽蔑していた私がスリッパをはいて東京から帰ってくるはめになるとは…吐いたつばが天からバケツ一杯返ってきたような心境だったのです。

ねんざの治療のために病院に行ったところ、私の足の指が巻き爪であるということをお医者さんに指摘されました。
爪が巻いていることは以前から知っていましたし、だんだん痛くなりはじめていたので、気にはかけていたのですが、どうしてよいのかもわからなかったので放っておいたのです。
そのとき、お医者さんから、爪はできるだけ伸ばすように、と言われました。切れば切るほど爪が巻いてしまうので、爪を思いきり伸ばすだけでも効果があるし、それだけで治る人もいますよ、というありがたいお言葉。
さっそく実行したのはいいのですが、爪を長く伸ばすために革靴がはけなくなってしまったのです。
スリッパで日々を過ごす毎日になってしまったのですが「いったいなんでこんな目にあわなければならないのか…恥ずかしい」と思うこと数日。
ところが、それまで、足に合わない靴ばかりはいていた私は、「むむむ、なんと快適で心地よいのだ!」とスリッパの魔力にとりつかれてしまったのでした。
「恥ずかしい?でも気持ちいい?けど恥ずかしい?けど気持ちいい?」ともだえ苦しみながら過ごすこと数日、スリッパなしでは生きられない体になってしまったようです。

最初は、時期が夏だったので、スリッパでもサンダルでもなんとかごまかしがきくだろう、と思っていたのですが、夏から秋、秋から冬になり・・・社会の目と恥そして罪悪感と戦いながら、「スリッパを売っている靴屋が悪い。売っているものを買ってはいて何が悪い」などと自分に言い訳しながらこの快適で心地よいサンダルを手放すことができなくなってしまったのでした。
爪を伸ばし続けたおかげで巻爪もだんだん回復したのに、巻爪の治療を言い訳に今日も私はスリッパを履き続けているのです。
冬の八甲田に行ったときもスリッパひとつでしたし、山形の山奥の秘湯といわれるところに行ったときも、多くの人が登山靴という中で私のスリッパだけが、旅館の玄関に登山靴に混じって並べられているのは壮観でした。
もちろんビジネス研修や講演会では、さすがにスーツにスリッパというわけにもいきませんので、革靴をはくのですが、私の両足は、まるで浮気をしてしまったような後ろめたい感覚でいっぱいになってしまうのです…
『スリッパ中毒』心理学の辞書をひもといても、そんな症例は出てまいりませんが、果たして、この中毒症状を癒すことはできるのでしょうか? 私の人生の課題がまたひとつ増えてしまったのでした。

2005年7月 9日 19:48