2007年2月17日
ホテル末広物語
私の東京の定宿はJR蒲田駅前にある「ホテル末広」なのである。
このホテル、何がよいかといえば、温泉つきのホテルなのである。
意外かもしれないのだが、東京の大田区は「黒湯」と呼ばれる真っ黒なコーヒーのような温泉が出るのである。
専門的に言うと、モール泉と呼ばれる太古の昔の植物が地下でマグマに熱せられることによって、まるで煮詰めた漢方薬のようなこの黒い色を作るのである。
モール泉は北海道や富山にも存在するのであるが、これほど真っ黒な色のモール泉は東京が一番多いのである。意外なことなのであるが、東京は温泉街なのである。
さらに、このホテルは一泊朝食つきで6800円と東京のホテルの相場からすればとても安いので気に入っているのである。
しかし、問題がないわけではないのである。
私がいつも泊まっているこの6800円のタイプの部屋は、部屋にお風呂もなければトイレもないのである。
しかも、トイレは男女共用なのでいつもドキドキしてしまうのである。
トイレの横に洗面台があるので、寝る前に歯を磨こうと洗面台に行って女性のお客さんに出会うとなぜか思わず引き返してしまったりするのである。やましい気持ちはないのであるが、なぜか引き返してしまうのである。
トイレを利用するときも、女性のみなさんが男性と一緒というのは嫌かもしれませんが、我々男性もなぜかすごくプレッシャーを感じてしまい、気を遣ってしまうのである。
これがこのホテルのたまにキズなのである。
しかし、トイレもお風呂もないので、ほかのビジネルホテルに比べて部屋が広く感じられ、私にとってはとても快適なのである。かといって、お部屋がとてもおしゃれだとか、明るくてすてきなお部屋だとは思っていただきたくないのである。どちらかといえば東南アジアの安宿っぽいホテルなのであるが、なぜかとても落ち着くのである。
かれこれ3年もこのホテルとおつきあいしているので、従業員のみなさんともすっかり顔なじみなのである。
このホテルは稼働率がとてもいいようで、ネットで予約しようとしてもなかなかとれないのであるが、最近は前日に電話をして無理を言ってしたとしても、何とか泊めてもらえているのである。
このホテルのサービスのひとつに下着や靴下の洗濯をなんと無料でやってくれるというのがあるのである。
長期の東京出張の場合、一番困るのが下着と靴下を大量に持って行かねばならないことなのであるが、このサービスの恩恵により、私は長期出張でも4日分の下着セットだけで何とかしのげるようになったのである。大助かりなのである。
ビジネルホテルなので客層は圧倒的にビジネスマンが多く、みんなチェックイン時にはスーツを着用しているのである。
その中で、スーツも着ず、しかも温泉旅館特有の浴衣も着ず、マイパジャマで館内をウロウロしているので、いろいろと問題も発生するのである。
従業員とも仲良しでパジャマでウロウロしているので、どうもほかのお客さまからはこの宿の息子さんかと思われることが多いのである。
温泉を楽しみに浴室に行くと、地方から来られた人に、声をかけられるのである。
「いやぁ、真っ黒な温泉とは珍しいですね」
何も知らずに私に温泉の話題をふってくるのであるが、その後の展開を考えるとこの人も気の毒な人なのである。我が意を得たりとばかりの私の温泉レクチャーを聞くはめになるのであるから・・・
しかし、それが私がこの宿の家族関係者だとさらに誤解をされる原因になっているようなのである。
このホテルにも息子さんがいらっしゃるのであるが、このお客さんがチェックアウト時にフロントで「昨日の夜、お風呂で息子さんに温泉の話をいろいろ聞かせてもらったんですよ」などと話すと事態はますますややこしくなってきたりするのである。
さらに私が東京の受講生にこの宿の温泉の話をしたりするもんだから、受講生も泊まってみたい気になるようである。そして、泊まるときに必ずフロントで「今日は平さんは泊まってますか?」と聞くのである。
この受講生が女性だった場合、新たなる誤解を招くようである。
私が講座を終えてホテルに帰ってくると、フロントの女性がにやけた顔で私にこう言うのである。
「平さんのいい人、○○号室にもうチェックインされてますよ。へへへ」
ますますもって正体不明の変なおじさんになっているのである。
ただひとつこのホテルに注文をつけるとすれば、このホテルにもほかのホテルと同じように有料テレビがあるのであるが、その有料テレビを見るためのカードの自動販売機がフロント横にあるエレベーターのすぐ側に設置されているのである。
この状態でカードを買える人というのは、私は勇者以外の何者でもないと思うのである。残念ながら、私はこの勇者の試練に立ち向かえないでいるのである。
誰か、この自動販売機を2階か3階の人気のないところに設置してくれるようにホテルにお願いしてくれないものであろうか?
私は切に願っているのである。
2007年2月17日 00:00