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2005年9月10日
東北秘湯の大惨事?ステルス爆撃機撃墜事件?

岩手県にやってきた。
ほとんど利益のない、交通費も出ない講演のために、盛岡での仕事を引き受けたのであった。大赤字である。
にもかかわらずなぜこの仕事を引き受けたのか? ふ、ふ、ふ、それは復讐するためである。

復讐、人には許しを教えている立場の私ではあるが、今日ばかりはリベンジのために東北の地に降り立ったのである。
何のためのリベンジなのか?
それは、今をさかのぼること1年前。私は、この地にある東北屈指の露天風呂でえらい目にあったからである。

人はなぜ温泉に行くのであろう?
それは、癒しを求めるからである。
ところが、夏の東北の露天風呂ときたら、癒しどころのさわぎではないのである。
写真でこの地の露天風呂を見たときに、私の魂はゆさぶられた。
何とすばらしい露天風呂であろう、魂までとろけてしまいそうなこの渓流露天風呂、ここに行かねば死んでも死にきれない。太りすぎて動けなくなる前にこの地に行かねば・・・私には時間がないのである!
そう思った私は、1年前、仙台の仕事の後に新幹線を乗り継いで、この露天風呂へ癒しを求めて立ち寄ったのであった。

しかし、そのとき私の目に映ったものは・・・湯船の外に置かれた風呂桶よりも数の多いハエたたきであった。
はて?なぜこんなところに大量のハエたたきが???と考える間もなく十数匹のアブが露天風呂上空を舞っていたのであった。
それはまるで、B29爆撃機を迎撃する戦闘機のごとく、クジラを襲うシャチの群れのごとくであった。
渓流露天風呂の醍醐味はお湯でほてった体をあの渓流の涼やかな風でゆっくりと冷やすことにあるといってもいい。
東北の温泉は、だいたいどの温泉も熱い。44℃はある。湯船にはそんなに長く浸かっていられないのである。
ところが、いったん湯船から出るやいなやアブたちが襲撃してくるのである。
慌てて常備してあるハエたたきを手にするもすでに多くの入浴者たちも同じことをしたのであろうすべてのハエたたきが壊れていたり、破れていたりで用をなさないのである。
こんなハエたたきを両手に持ってふりまわしたところでかなうはずもなく、そこは癒しとは無縁の戦場であったのである。

しかし、東北の露天風呂はやっかいなのである。冬場は豪雪のため、初夏から10月の初旬までしか営業していないところが多いのである。
そこで、平は考えた。
文明の利器を総動員して夏の絶景渓流露天風呂で癒しを作ろうと。
アブごときに負けてはならじ!!

リュックの外には2本の専用ハエたたきがまるで機関銃のようにそびえ(入手には困難を極めた。関西には今どきハエたたきは売っていないのである)、さらにリュックの中には、ノズルつきの殺虫剤。これはきっとサイドワインダーミサイルのようにアブたちを次々と撃墜するであろう。そして極めつきは、虫除けスプレー。気分はまるでアフガンの大地に立ったランボーである。
これだけ揃えればきっと快適な秘湯露天風呂ライフが約束されたも同然のはず。

重装備で昨夏のリベンジを果たすべく、かの温泉地を訪れた私が目にしたものは・・・昨年と同じく、露天風呂で逃げ回る人々の姿、そして去年と同じく十数匹のアブたちが乱舞している光景であった。
ふ、ふ、ふ 今年は違うぜ!
私はさっそくすっぽんぽんになってリュックをひっさげて露天風呂に向かったのであった。
ところが、アブ用の大きなハエたたきを両手にふりかざしてみたものの、アブたちのスピードはさすがに速く、到底太刀打ちができないことが判明。
さらに殺虫剤をふりまくと温泉を汚してしまうことに気づいたので、温泉マニアの私はそれもできないのであった。
うぅ、このままでは、去年の二の舞・・・
とりあえず、44℃のお湯でゆっくりと温まった後、湯船からあがるや否や、アブの大群が私の巨体をめがけて突入してきた。

このときに一番役に立ったのが、虫除けスプレーであった。
露天風呂の脇ですばやく虫除けスプレーをふりかけると、あらあら不思議、あら不思議!なんと一匹のアブもわたしには近寄ってこなくなったのである。
これはまるで、アメリカ軍が開発したレーダーに映らないといわれているステルス爆撃機と同じではないだろうか?
これはいい(^-^)と思った私は、ゆっくりとくつろごうと、露天風呂の側の渓流沿いの場所で、うつぶせになって昼寝をきめこんだのである。
アブたちからすれば、私はきっと透明人間のように見えないのであろう。
ふふふ これこそ見えない爆撃機・ステルスと同じ。
その間、アブたちに襲撃されて、「これはかなわん」と逃げ惑う人たち多数。
なぜ、あのデブだけがアブにねらわれないのか?といぶかしげに見ている人もいる。
ふふふ 君たちとは装備が違うのだよ、と優越感にひたりながら、ゆっくりと体を仰向けにしたその途端、私の身に悲劇が…

そう、懸命な読者ならおわかりかと思うが、しみるのがこわくて一箇所だけ虫除けスプレーをかけるのをためらった場所があった。
そこにアブの大群が集中したのである。
あまりにも油断しすぎた・・・
気づいたときは手遅れで・・・

アブにかまれたことあります?
その後3日ほどは、蚊にかまれたときの10倍くらいに腫れあがった戦傷が残り・・・それも3箇所も・・・かゆさも蚊の10倍で・・・人前で掻くこともできず・・・ムヒを塗ったら塗ったでしみること・・・
こうしてステルス爆撃機は見事撃墜されたのであった。

うちの奥さんにとっては、めでたし、めでたし。はあ?

2005年9月10日 00:00