tairaonsen2.jpg

2006年3月 4日
脱走犬チロの物語

以前、平家のカースト制度を書いたとき、「平家のカースとの中でネコが第2位なのに、なぜ犬が最下位なのか?」とメンタル愛犬家協会から厳しい苦情をいただいた。
実は、平家では犬を虐待しているのではないかという疑いをかけられたのである。
そこで、この度、私より下のカーストに甘んじていた、そして平家を脱走してしまった迷犬チロの物語を語りたいと思う。

平家は私が子供の頃から、犬とネコをいつも飼っていたのであるが、うちの奥さんが我が家に嫁にやってきたころは、黒猫が一匹いるだけで、犬は飼っていなかったのである。
我が家は田舎の一軒家なので犬でもネコでも飼い放題なのである。
もともと犬好きだった我が奥様は、最初は「犬でも飼いたいわね」と言っていたのだが、我が家に飼っていたネコになぜか異様になつかれてしまったのである。

私は結婚してから、それまで住んでいた母屋の隣の離れに奥様と住むことになったのだが、それと一緒に当時我が家にいた黒ネコが母屋から引越して、離れの我が家に住むようになったのである。
もともとは犬を飼いたがっていたうちの奥様なのだが、これまでネコを飼った経験が一度もなく、しかも、そのネコがなんと我が家で子猫を4匹も出産してしまったのである。
たちまちネコの魅力にとりつかれてしまったわが奥様は、それ以来愛猫家になってしまったのである。
しかしながら、犬もとっても大好きだったうちの奥様は、機会があれば犬も飼いたい、と考えていたのかもしれない。

子供ができ、3歳くらいになった頃に、家族でドライブをしたときに、日本海のとあるお寺を訪れたところ、そこにかわいい子犬がいたのである。
とっても人なつっこい犬で、お寺の住職さんの話によるとどうも捨て犬らしいのである。
うちの子供たちもかわいい子犬に大喜びで、この犬はなんと私の車の中まで入ってきて居座ってしまったのである。
せっかくだからこのまま家まで持って帰ろうか、ということになり、我が家に犬が一匹増えたのである。
その日の夜、まだ犬小屋もなかったので、このかわいい子犬は私と一緒に一晩布団の中で過ごしたのである。
かわいい子犬なのだが、なぜか足だけが異様に大きかったのである。
なんか不恰好な犬だなぁ、と思ったものの、あまり気にもしていなかったのであるが、このときこのことをもっと注意しておけばよかったのである。

この異様に足が大きい犬は、その後、どんどんどんどんと大きくなり、やけに気性の荒い犬になったのである。
なんとか犬をしつけようとするのだが、どうも犬を飼っていると言うよりも我々が犬に飼われているような状況になってきたのである、
いくらなんでもこれはおかしい!と思った私は、犬を調教してくれるしつけセンターなるところに電話をして、うちのワンちゃんをしつけてもらうべく調教師の人に来てもらったのである。
その調教師は、うちの犬を一目見るなりこう言ったのである「あぁ、すいませんけどこの犬は無理ですね。もう手遅れです」
「なぜ?」
「これは、紀州犬ですね。闘犬で、ひょっとしたら血統書つきかもしれないですよ。もう、手遅れですね。あなたたちこの犬に飼われてますよ」
と言うのである。
飼われてるったって私はこの犬からエサをもらったことは一度もないのだが、にもかかわらずどういうことなのであろう?

その後、この犬はますます大きくなり、私以上に大きくなり、2mを超える大犬になってしまったのである。
我が家は田舎ゆえ敷地が広いので、中庭に10mほどのとっても長い鎖をつけて犬をつないでいたのである。
しかし、とにかくこんなに大きい犬なので、散歩につれていくのは私以外無理なのである。
しかも、うちに来た日に私と一晩をともにしたせいか、私には異様になつくのである。
エサをやるのも命がけ、とにかく犬を飼っていると言うよりも、トラと一緒に住んでいる状態であった。
あるとき、母屋の方から「クーラーが急に効かなくなったんだけど、見に来てくれないか?」と頼まれて、行ってみたところ、どこも故障していないはずなのに、クーラーが効かないのである。
おかしいなぁと思い、室外機を見に行ったところ、な、な、なんと銅でできている室外機のチューブをうちのチロが噛み切ってしまい、ガスが抜けてしまっているのである。チューブがゴムではなく、金属製であったにもかかわらずである。
一時が万事この調子なので、首輪を切ること数知れず。鎖を切ること数知れず。
遠くで悲鳴が聞こえるので行ってみると、チロが鎖を切り、我が家から脱走し、よその子供たちと遊んでいるのである。
チロにとっては遊んでいるつもりでも、近所の子供たちにとってはトラが襲い掛かってきたようにしか感じられず、とっても困った犬になってしまったのである。
このように様々な迷惑をかけるので、私以上に迷惑をかけるので、私より下のカーストに甘んじてしまうはめになったのである。

下位のカーストの者同士、私とはとても仲良しだったのであるが、その頃私はだんだんと今のような体型に近づいてきつつあり、また出張も多くなり、そうそうチロを散歩に連れて行ってやれなくなったのである。
その代わりに鎖の長さがどんどん延ばして、中庭で走り回れるようにはしていたのだが・・・
そんなある日、私の東京出張に奥様と2人の子供がついて来て、4日ほど家を空けたのである。
その間は、母親が命がけでチロにエサをあげてくれていたのであるが、4日ぶりに家に帰ったところ、チロがいないのである。
うちの母親が言うのは「今朝から姿が見当たらない」とのことである。
いつものように脱走し、近くで散歩を楽しんでいるのであろう、と探しに行ったのだが、いないのである、。
その後、チロはどこをどう探そうにも姿を現さないのである。
迷犬チロよ、いずこへ・・・
ひょっとして私たちを求めて東京にまで行ったのであろうか?
いまだにチロの犬小屋だけが中庭にはあるのである。
どなたか、ご近所にトラのような犬をみかけませんでしたか?
心当たりの方は、事務所までご一報を!

2006年3月 4日 00:00