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2006年8月19日
変態の都パリ

機内でのフランス語講座を終え、我々はついに花の都パリの玄関ともいえるパリ・シャルル・ド・ゴール空港に到着したのである。

本来ならば、ここからリムジンバスに乗ってパリに行くところなのであるが、我々の予約したホテルは、リムジンバスの到着地からさらにタクシーに乗り換えねばならない遠い場所だったのである。
パリのタクシーは日本のタクシーとは少々事情が異なるのである。
日本のタクシーならば4人まで乗れるのであるが、パリのタクシーでは助手席になかなか乗せてもらえないので、定員が3名になってしまうのである。しかも、平家は大荷物を抱えての旅行なので、必然的にタクシーが2台にもなってしまう。
これでは効率が悪いので、ホテルに頼んでお出迎えを用意しておいてもらったのである。これなら、1台分のタクシーよりは高いが2台分のタクシーよりは割安なのである。

ところがである。
待っていてくれるはずの送迎車のドライバーがいないのである。
名前を書いた大きなボードを高く掲げたドライバーはたくさんいるのであるが、その中に私たちを迎えてくれるドライバーがいないのである。
仕方なくホテルに電話して事情を説明したところ、ホテル側からもすぐにドライバーに連絡をするのでそこで待つようにとのことであった。
待つこと5分、ようやくドライバーが現れたのであるが、な、な、なんと、右腕に刺青、頭はつるつる、安田大サーカスのクロちゃんの人相を悪くしたようなとても危なそうなドライバーさんだったのである。
「ほんまかいな!」
平家一同、この人についていって本当に大丈夫なのだろうか?とすこぶる怪しがったのであるが、このいかついお兄さん、人相にもかかわらず、怪しい日本語を操り、やけに愛想がよいのである。
平家の大きなスーツケースを2個ひょいと抱え込み、車の方に向かって行ったのであるが、駐車場のでかいバスの前で立ち止まり「これで来たんだ、さぁ乗れ」と言うのである。
「えっ?なんだよ?。バスの運転手がアルバイトでホテルの送迎もやっているのかよ?」と我々一同びびたっところ、そのお兄さんは「なわけないよね」とバスの裏に止めてあったぼろいワゴン車に我々を案内してくれたのであった。
見た目はいかついお兄さんなのだが、我々がパリは初めてだと言うと、ホテルに行く途中で市内をプチ観光してくれたのである。
人は見かけによらないものである。

せっかく花の都・パリに来ているのだから、普通なら2、3日はゆっくり観光するところであろうが、平家ときたら、もう明日の昼1時のTGVでスイスに旅立ってしまうのである。
しかしながら、せっかくパリに来たのだから、見たいところやしたいことが山のようにあるのである。
7月にNHKでパリの世界遺産の特集を1週間連続でやっていたのを見たこともあって、実質は半日しか観光時間がとれないにもかかわらず、パリで行きたいところが山のようにあるのである。
普通の観光客なら、ルーブル美術館や、オルセー美術館、ちょと足を伸ばしてパリ郊外のベルサイユ宮殿、ノートルダム寺院あたりには必ず行くのであろう。しかし、そんなことをしていたのでは、時間がいくらあっても足りないのである。
そこで、平家のツアーコンダクターである私は、各自に1ヵ所ずつ行きたいとこを申し出なさいと言ったのである。
絵が好きなうちの娘はなぜかモンマルトルの丘が気に入っているようでそこに行きたいと言う、うちの息子はエッフェル塔に上りたいと言う、うちの奥さんはシャンゼリゼ通りで買い物をしたいと言う、そして私は凱旋門の横のカフェでゆっくりコーラを飲みたいと言う。
このすべてを3時間以内で満たすのがツアーコンダクターである私の指名である。

ホテルに到着したときには、パリ時間で夕方の5時になっていたのである。日本時間では真夜中の12時ある。
しかしながら、もうひとふんばり、パリに来た限りは今日中にどうしてもやらねばならないことがあるのである。
それは、セーヌ川下りなのである。
パリにある世界遺産というのは、実はこのセーヌ川付近の景色なのである。
これをしなければ、後々後悔することになると思い、平家一同眠い目をこすりながら、セーヌ川下りの船乗り場まで向かったのである。

川にかかっている橋の上には、パリジャンの若いカップルがたむろしており、1組のもれなくディープなキスをしているのである。
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そんな横を小学校5年生になったお年頃のうちの子供たちが歩いて行くわけである。
娘は見ないふりをするのに必死なのであるが、まだまだ子供のうちの息子は、叫んだのである。「うわー、この町、変態ばっかりやん!」
確かに日本でこのような光景を見ることはまずないであろう。
「君ももう少し成長すると、その変態の仲間入りをするのだよ」とも言えず、父親としては、難しいところなのである。

そんなことを言いながら、観光船に乗り込んだのである。
その観光船は2階建てになっており、1階は室内で、クーラーが効いたゆっくりできる環境になっており、2回はオープンエアーで日差しを浴びながら何もさえぎるものがない状態でセーヌ川を観光できるようになっているのである。
この日、パリは31℃の快晴でとても暑かったのであるが、ほとんどの乗客はこの2階席で川下りを楽しんでいたのである。
何かとてもロマンチックな雰囲気なのである。
この観光船に乗っている若いカップルも、とってもロマンチックな気分になっているのであろうか、あちらこちらでディープなキスをしているのである。
「変態だらけの船やんか?」
息子はセーヌ川観光よりも、カップル観光をしているのである。
さらに、である。
ただでさえすごいことになっている船中なのに、ある橋の下に来たとき、観光船のガイドのお姉さんが「この橋の下でキスをしたカップルは永遠の愛に恵まれるという言い伝えがあります」と言ったのである。
当然ながら、船中のほとんどのカップルがキスを始めたのである。

そのとき、うちの息子と娘が我々をすがるような目で見たのである。
「あんたらはまさかこんな変態ではないでしょうね」と・・・
子供たちよ、よく覚えておきたまえ、もちろん、君たちが起きている間はそういうことをしないのだよ。
ただし、君たちが眠ってからは、もっとすごい変態なのだよ。
ふ・ふ・ふ

2006年8月19日 00:00