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2006年8月12日
バイリンガルを目指して

ボンジョル?ノ!みなさま。
2週間のごぶさたでございました。
ヨーロッパ帰りの平でございます。

何とかかんとか、すべての用事を片付け、無視し、ぶっちぎり、平家は飛行機の出発地である中部国際空港・セントレアへと向かったのであある。
本来であれば、近くにある関空か、利便性を考えて成田に行くのがの海外旅行のあるべきの姿なのであろうが、なにぶん、マイレージの無料チケットのため、予約が取れたのが中部国際空港発の便だったのである。
出発便は8月28日の朝10時だったので、27日ぎりぎりまで事務所で仕事を片付け、中部国際空港で前泊したのである。
中部国際空港に行ったのは、もちろん初めてだったのだが、関空や成田と違い、夜10時台の空港へ向かう電車は我々家族しか車両に乗っておらず、とんでもない田舎空港に来てしまったようであった。

そして、次の日、我々はいそいそと飛行気に乗り込んだのである。
12時間もの長旅ではあるが、何たって今回はビジネスクラス。しかもシェルフラットと呼ばれるJALが誇るシートが170°に倒れるデラックスな飛行機なので、長旅もウキウキだったのである。

平家一同の機内での楽しみは、まずは食事。
そして、食事の時間が終わると各自がそれぞれの好みに走るため、まったくバラバラな行動をするのが、うちの旅行の特色である。
パパは入念に旅行の下調べをしているし、息子はテレビゲームに夢中、奥様は機内での映画鑑賞(パリに着くまでにパーソナルテレビで5本も見たそうである)、娘はお絵かき帳を持参して、このときとばかりにただひたすらお絵かきに励んでいる様子なのである。

長い間、海外便に乗っていない間に、飛行機も進歩したものである。
機内の食事は、出発してすぐに1食めが出された後は、簡単なメニューではあるが13種類もある食事の中から、好きなときに好きなものを注文できるのである。これは、食べねばなるまい。
パリ到着の1時間半前までなら食べ放題なのである。
また、7年前はみんなが一緒に大きなモニターを見ての映画鑑賞だったのであるが、今は全席にパーソナルビデオが備わり、映画なんか20本くらいから選べるのである。ちなみに上方演芸会などのビデオもあったのである。


さて、パリ到着2時間前くらいのとき、スチュワーデスさんから、フランス入国の書類の書き方の説明なんかがあったのである。
この時分からうちの子供たちの気分も盛り上がってきたようで、フランスでの言葉のことに関して私に質問してきたのである。

娘:「ねえねえ、フランス語で『こんにちは』は何て言うの?」
パパ:「『ボンジュール』って言うんだよ」
娘:「ポンポンシュー」
パパ:「いやいやそうじゃなくて『ボンジュール』。『盆中』って覚えたらいいかな」
娘:「なるほど、『ぼんじゅー』ね。じゃあ、『ありがとう』は?」
パパ:「『メルシー』。これは、『飯』を長?く言えばちゃんと通じるからね。『め?し』でOK」
娘:「なるほど。じゃあ『これは何?』っていうのはどう言うの?」
パパ「『ケスクセ』。これは、『ケツくせー』で覚えておけばいいんだよ」
などと機内でフランス語講座を開催していたのである。

そのときに、最後の機内サービスで、スチュワーデスさんが、飲み物のサービスにやって来たのである。
機内は我々と同じような日本人の観光客らしき人が半分と、フランス人が半分くらいの割合で乗っていたのである。
そのときに、我々の近くにいたフランス人が「アン・カフェ・シルブプレ」と言ったのである。

息子:「ねぇねぇ、パパ、あれは何て言ってるの?」
パパ:「あぁあぁ、あれはね、『コーヒーを1杯ください』とフランス語で言ってるんだよ。フランス語で『1・2・3』は『アン・ドゥ・トワ』。『カフェ』は『コーヒー』のこと、『ください』は『シルブプレ』。だから、『アン・カフェ・シルブプレ』は『1杯のコーヒーをください』になるわけ。言ってごらん?:」
息子:「アンカフェブブブブレ」
どうもうちの息子は、『シルブプレ』が上手に言えない模様なのである。
「シルブブレ」になったり、「シフフフレ」になったりするのである。
息子は、「ねぇねぇ、パパ、さっきみたいに何かわかりやすい日本語風にして教えてよ」と言うのであるが、これは、日本語風にはしにくいのである。
「そうだなぁ、『あんたらしもぶくれ』ん? ちょっとこれじゃあ通じないなぁ」とぼそぼそ口に出して言いながらが考えていたところ、子供たちの頭には『あんたらしもぶくれ』が頭に焼きついてしまったようである。

我々がこんなことをやっているとき、ふと隣のフランス人軍団に目を向けてみると、みんなどうもこのやり取りを聞いていたようで、全員クスクスと笑っているのである。
隣にいるわけのわからない日本人家族が、フランス語をしゃべっているのだが、その会話ときたら、日本語に直すと「『コーヒーを一発くださる』とか『コーヒーをいっぱいくだくだませ』、『コーヒーをいっぱいくだらん』」とフランス語になっていない言葉を連呼しているのだから、フランス人的には結構おもしろかったのであろう。

あまりにもうちの息子が『シルブプレ』と言えないものだから、我が席の通路向かいに座っていたやや年配のとってもふっくらとした色白のおばさんが、頼みもしないのに、無理やりコーチを名乗り出たのである。
そのおばさんが、うちの息子に流暢なフランス語で「『アン・カフェ・シルブプレ』と言ってごらんなさい」というようなことをにしゃべったのである。
ところが、うちの息子は、先ほど私がついつい口走った「あんたらしもぶくれ」が頭にインプットされているので、そのおばさんに言ったのである。

「あんたは、しもぶくれ」

これを聞いて、ことのいきさつを見守っていた日本人グループがクスクスと笑い始めたのである。
そう、まさにこのおばさんは、下ぶくれだったのである。

しかし、おばさんにはそんな日本語がわかるはずもなく、もう一度息子に向かって言ったのである。
おばさん:「アン・カフェ・シルブプレ」
息子:「あんたは、しろぶくれ」
おばさん:「ノンノンノン、アン・カフェ・シルブプレ」
息子:「あかんで、しもぶくれ」

日本人チームフランス人チームともに機内は大爆笑なのである。

そんなことをしている間にいよいよパリに到着することになり、スチュワーデスの機内アナウンスとともにこのフランス語講座は幕を閉じたのであるが、この一件のおかげでうちの息子が日本人グループの人気者になってしまったことは、書くまでもないのである。

飛行機を降りた後、息子が私に言ったのである。「あんたが一番しもぶくれ」

2006年8月12日 00:00