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2006年9月 9日
ジョージ・クルーニーを探せ

ほったらあかん山、いや、マッターホルンを後に平家は、スイスの一番南にあるルガノという町に向かったのである。
ここは、ティティーノ地方と呼ばれる、はっきり言って日本人がスイスで一番観光に行かない地方の一都市である。
なぜ、我々がこんな人気のないところに向かったかというと、一重にイタリアのコモ湖をクルージングするためなのである。
このルガノという町は、スイスでもイタリアのコモ湖に近いほぼ国境の町なのである。

ここまでの道のりと違って、我々はスイスのブリークというところでレンタカーを借りて車で移動してきたのである。

「あなたのような雑な性格の人が、外国で車など運転しようとよく思いつきましたね」と突っ込みを入れられそうなのであるが、みなさんもご存知のとおり、スイスは田舎なのである。
よって、車もあまり走っておらず、この私でもドライブできるであろうと考えたうえでの決断であった。
左ハンドルの車で左車線を走るのであるから、緊張はするものの、右に曲がろうと方向指示器を出したつもりがフロントガラスのワイパーが動き、雨模様なのでワイパーを動かそうとするとウィンカーが点滅する、といったことを20回くらい繰り返したころには運転にも慣れ、何とかかんとかルガノまでたどり着いたのである。

ルガノに到着した翌日、我々は念願のコモ湖のクルージングに向かったのである。
コモ湖はとっても広い。琵琶湖よりも広い。
コモ湖にはたくさんのおしゃれな町が点在し、大金持ちのヴィラや世界のホテル愛好家が愛してやまない超一流ホテルが湖畔にひしめきあっていて、ゴージャスで優雅なクルージングが人気なのである。
クルージングをしている間だけでもちょっぴり貴族や大金持ちになった気分が楽しめるのである。

無料航空券で旅費を浮かせ、インターネットの割引やせこい手を使ってホテル代を安くあげて旅をしている平家なのだが、実はここまでの道のり、思わぬ出費で財布の中身は火の車だったのである。
食費と山に登るためのロープーウェイ代が高すぎる。
スイスでは、コーラ1本350円もするのである。日本で買えば150円のあのペットボトルがである。
昼食に粗末なレストランに入りスパゲティを食べたとしても、スパゲティ代2,500円もかかるのである。4人家族であるから、昼食代1万円也。
これは痛すぎる。
スイスでガストやサイゼリアを探しても、そんなものはどこにもないのである。
しかも3,000m級の山を往復しようとするとロープーウェイ代だけで3,000円もかかってしまうのである。
子供は半額なのだが、それでも家族で一往復9,000円もかかってしまうのである。
しかしながら、スイスには色んな山や氷河があるので行ってみたいのである。
よっていあっちもこっちも登ってしまった結果、真夏のこの時期なのに私の財布にはもはやすでに秋風が吹いているのである。

だからこそ、このコモ湖のクルージングだけでもハイソサエティで優雅な気分を楽しみたかったのである。
我々が向かう先は、コモ湖の中でもひときわ有名で、「コモ湖の真珠」と異名をとるベラッジオという町である。
ラスベガスにはこの町の名前を取った超一流ホテルがあると聞く。
また、ハリウッドスターが別荘を持つことでも有名で、ジョージ・クルーニーもここに別荘を持っているらしい。
2時間近くの遊覧を終え、ようやく船がベラッジオの町に着いたのであるが、船着場からしてテーマパークのようでとてもかわいい。
この町は、町全体が丘になっており、何本もの細い小道が丘の上に向かっており、その道沿いにとてもかわいい小物などを売っているショップが並んでいるのである。
うちの奥様と娘はもう目がキラキラで、瞳孔が死の直前のように開ききっているのである。

しかし、ショッピングに夢中なうちの奥様と娘を横目に、私の懸念はこの日の昼食なのである。こんなおしゃれな町でレストランに入れば、昼食といえどもいったいいいくらかかるのであろう・・・
そんな心配を抱きつつ、私と息子ははっきりいってショッピングが嫌いなので、奥さんと娘とは別行動をとったのであるが、かといってすることもない。
そこで、この町の観光の目的をこの町にあると聞くジョージ・クルーニーの別荘を探すことに決めたのである。

この町は、有名だが意外と小さいのである。
そして、ハリウッドスターが買うような別荘らしき優雅な建物はあまりないのである。
岬の先端にあるお城のような建物があったので行ってみたのであるが、それは超高級5つ星ホテルであった。
クソ暑い真夏だというのに、ドアマンがフロックコートで正装していて、お茶でも飲もうかという気分にすらなれないほど威厳があるホテルなのであった。
きっとこのホテルでは、スパゲッティ一皿2,500円ならぬ、コーヒー一杯2,500円はきっととられるのであろう。
さらに、岬の反対方向にも一軒すごい宮殿を発見したのであるが、これはどこぞの大金持ちが所有している私有地であった。
これ以外に優雅な建物はないのである。
まさか、ジョージ・クルーニーの別荘が2LDKのアパートなのか???
などと探索を続けること3時間、その間にアイスクリームとコーラを飲むために立ち寄った喫茶店2件。
ついにこの町でジョージクルーニーの別荘を発見することもなく、われわれは再び帰りの船に乗り込んだのである。

そのときである。
我々は発見したのである。
町外れの森の中にクルーザーでしか行けないようなすばらしいヴィラ多数。

そうなのである。
ハリウッドスターがこの町に別荘を買うということは、プライベートを重視してのことだったのであろう。
きっとこの森のヴィラのどれかが彼のものなのだろう・・・。しかし、そんなことよりももっと切実な問題は、この町を後にするころに、私の財布の中は秋風からさらに極寒のような状態になってきたことなのである。


2006年9月 9日 00:00