2006年12月15日
カバンの中身は何かな?
先日、東京の事務所でジタバタしていると、東京のスタッフの竹田がやってきたのである。
「平さん、いったいどうしたの?」
「いや、実はね。蒲田駅から品川まで京浜東北線で来たんだけど、品川駅で降りるときに僕の手提げカバンがもっと旅行したいと言うんだよ。あまりにもだだをこねるから、じゃあ必ず今日中に帰ってくるんだよ、と旅立たせたんだけど、まだ帰って来なくて心配してるというわけだよ」
と事情を説明したところ、竹田が顔色も変えずに
「手提げカバン、電車の中で忘れたんですね」
ときっぱりと言い切ったのである。
「・・・・・・うん」
そうなのである。
電車の網棚の上に置き忘れてしまったのである。
品川駅で駅員さんにその旨を伝え、手配をしてもらったのであるが、乗っていた電車が南浦和行きだったため、しばらく時間がかかるとのことであった。
そのとき、駅員さんからカバンの特徴や何が入っているかを詳細に聞かれたのである。
「で、平さんのカバンだと特定できるようなものは何か入っていますか?」
「そうですねぇ、食べかけのロッテガーナチョコレートが入っていますね」
「ほかには?」
「あと、のどあめが3つくらい。あ、これは飛行機の中でスチュワーデスさんにもらったやつです」
「ん?それじゃあちょっとわかりにくいですねぇ」
「あっそうそう、サンマルクでもらったチョコクロの割引券が入っています。5個買うと6個もらえるやつです」
「ん?それではねぇ・・・」
どうやらカバンの色や形、材質とカバンの中に入っているものをコンピューターに入力し、それで日本全国どこからでも忘れ物照会ができるようになっているのである。
さすがJR。やるもんである。
そのために事細かに内容を入力をするそうなのであるが、しかしながら私もカバンの中に入っているものをすべて覚えているわけではないのである。
というより、私は何でもかんでもカバンの中に詰め込むクセがあるのである。
そうそう、本が4冊入っています。
「ほう、で、そのタイトルは?」
「全部旅行記なのですが、えっと、一冊目は『ぼっぼっぼくらはエジプト探検団』です」「何ですか?その本?」
「いや、エジプトのピラミッドの探検で有名な吉村さんが書いた本ですよ」
「あぁなるほど、ほかには?
「『ガンジス河でバタフライ』と『中国の骨は1本すくない』と『私の旅に何をする』の全部で4冊です」
このときに限ってお笑い系の旅行記ばかり、カバンに入れていたのである。
当然、駅員さんは「あんたはいったい何者?」というようなけげんそうな目で私を見るのである。そして私に聞いてくるのである。
「本当に中国人の骨は一本少ないのですか?」
「いや、そんなことはないのですが、作家が中国を旅行してそういうふうに感じたようなのでこういうタイトルがついているのです」
「では、ガンジス川でバタフライも実際はガンジス川をバタフライで泳いだわけではないのですね」
「いや、この本はですね。本当にガンジス川をバタフライで作家の人が泳いだようですよ」
などと2人の会話は延々と続いてけっこう盛り上がったのであるが、私もカウンセリングの時間が迫ってきたので、そろそろ行かなければならなくなったのである。
最後に駅員さんにくれぐれもお願いしたのである。
「どうか、カバンが出てきたら、私の携帯電話に必ず連絡してください。万が一にも事務所や家に電話をかけられた暁には何を言われるかわかったものではありません。最近うちの事務所では、この種のことで罰金をとられるのですよ」
「えっ、忘れ物で罰金ですか?」
「そうなんですよ。本当にひどいと思いません?うちの事務所」
「本当にねぇ、ひどい社長さんですねぇ」
「えっ、社長は私なんですけどね」
「・・・・・・」
などと何とかばれないように駅員さんにお願いをしたのであるが、私のカバンが出てこないのである。
カバンをなくしたのはヒーリングワーク前の金曜日であった。
土曜日は忘れ物センターに3度も電話したにもかかわらず、「そのようなカバンはない」とのことであった。金曜日1日だけで、京浜東北線でのカバンの忘れ物が45個もあったそうなのである。けっこうみんなやるもんである。
日曜日の朝一番にも電話したのだが、やはり出てこないのである。
ところが、その日の昼になって事務所からメールが来たのである。
そのメールは、「大宮駅の忘れ物センターから平という人の忘れたと思われるカバンが出てきたという連絡が事務所にきました」という連絡だったのである。
どうもチョコレートで汚れた私の名刺と今年の2月にギックリ腰をしたときの病院の薬袋に書いてあった私の名前から、事務所に連絡がきたようである。
私があれほどやめてくれと頼んだのに・・・。
しかも、忘れ物センターの人は、カバンの中に入っているものを事細かにうちの事務所スタッフに告げてくれたそうである。
事務所では、やはり決め手は食べかけのガーナチョコレートだったようである。
もちろん、大阪に帰ってきて、罰金箱にお金を入れさせられたのは書くまでもない。
2006年12月15日 00:00