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2007年5月26日
ボロは着てても‥‥

年に1回の人間ドックが近づいてきて、ソワソワ落ち着かない今日このごろですが、
みなさま、お元気ですか?
いまだにアブに刺されたあとがかゆい平です。

不健康な生活を、日々、実践している私なのだが、なぜか私のまわりには健康志向の
人々が多い。
私にいちばん近い健康オタクな人は、うちの奥さんである。
ちょっと前まで『あるある大辞典』のねつ造問題が話題になっていたのだが、じつは
私もあの番組の被害者なのである。


いつのころからか、食前にはまず「ミカンを食え」と言われるようになった。
私としては、「食後のミカンだろう」と思ったりするわけだが、上司からの命令は絶
対である。
もちろん、いつにも増して納豆もたくさん食わされた。
しかも、これらぜんぶ、ねつ造なのである。
うちの娘なんか、いまだに食前にミカンを食べているのだが、そうっとしておいてあ
げているのである。

うちの受講生にもまた健康マニアがじつに多い。
昔の大阪の受講生には、自然食のお店をもった子までいるのである。
このお店はすごく凝っていて、コーヒーまでもがタンポポコーヒーだったりするので
ある。
「うちの受講生がせっかくお店を出したんだから、ここは行ってやらねばなるまい」
と、もう5年ぐらい前になるのだが、休みの日にこのお店にランチをとりにいったの
である。

休日の私はふだんにも増し、だらしがない。
その日もいつものようにひとっ風呂浴び、マッサージしてもらいやすいようにと、上
はポロシャツ、下はくたびれたジャージ姿であった。

私の場合、スウェットではなく、あくまでもジャージである。
しかも、ひと昔前の、だれも着ていないようなアディダスである。

マッサージのあと、ほぼ幽体離脱したような風体で、髪の毛ボサボサのまま、その店
に赴いた。
とてもお洒落で、シックで、空気には透明感あふれる爽やかなこの素晴らしい店に、
こんな格好で私は赴いたのである。

午後2時前でお腹も空ききっていたので、とりあえずオーダーしたのである。
「コーラ」
「ありません」
「では、ブラック濃いめで」
「当店にはタンポポコーヒーしかございません」

「なんにもない店やのう。では、腹も減っているので、ステーキでも焼いてくれる?」
「ありません」
「じゃ、親子丼」
「すいませんが、ありません」

「しょうがないのう。では、食えるものならなんでもいいので持ってきて。
それと、スポーツ新聞と『週刊実話』、ある?」
「ありません」
そして、持ってきてくれたのは、イヤミのように、読むところがほとんどない『健
康』という雑誌なのである。

「あ、それと、灰皿もちょうだい」
「すいません、ありません」
‥‥なんとも居心地の悪い店なのである。

この会話はうちの受講生としたのだが、私となんの面識もないバイトの店員さんは、
厨房の中で“ややこしい職業”のお客さんが来たとビビッていらっしゃるのである。
もちろん、その店に出入り禁止になったことは、書くまでもない。

風体で誤解を受けるといえば、温泉旅館でもよくあるのである。
私は一人で温泉旅館に泊まることが多いのだが、一人泊まりで一泊二食付き1万円以
上のところに泊まることはまずない。

温泉旅館の基本的なフォーマルウェアは、浴衣とたんぜんであろう。
しかしながら、以前にも書いたと思うのだが、私の場合、浴衣が問題なのである。
浴衣のサイズはどの旅館でもあるのだが、帯は均一なのである。
普通の人は帯を二重に巻いて結ぶのが基本なのだが、私は二重にすると微妙に結べな
い。
そこで、一重で結ぶと結び目のわっかがものすごく大きくなり、不格好なのである。
であるからして、いつも温泉旅館にはマイ・パジャマ持参で行く。

私の行く温泉旅館は安いところなので、部屋出しで食事をとることはまずない。
大広間で部屋ごとに用意された食事をとるスタイルなのである。
ほかのお客様は浴衣にたんぜんでまことに温泉宿らしい。
そんなところで派手なパジャマを着て一人飯を食っていると、浮くのである。

ほとんどの場合、まわりからはお客さんとは見てもらっていないようである。
宿の人がお客様にまじってメシを食っているように見られているようなのである。

そう認識されるのだからして、そのあとがたいへんなのである。
夜、旅館をウロウロしていると、「お風呂はどこですか?」とか「宅急便は出せます
か?」とか聞かれたりするのである。

はじめのころは素朴に「お風呂は右の階段を降りて地下にありますよ」とか「宅急便
ぐらいはきっと送れるでしょう」などと答えていたのだが、あるとき、どうも旅館の
関係者だと見られているという自覚をもったとき、気づきがおとずれたのである。
ちゃんとていねいに説明してあげないと、ほかのお客様から、「なんだよ、この旅
館、エラそうだな」と思われたりして、旅館に迷惑がかかってしまうのではなかろう
か?

それ以来、気を使いながら馬鹿ていねいに説明したりするものだから、ますます関係
者ぽくなってしまい、とても話がややこしくなってきたりするのである。

このままでは、明日の朝、玄関先でお見送りぐらいしたほうがよいのであろうか?
温泉宿に行くたびに、とても気を使うのである。

2007年5月26日 00:00