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2007年5月 5日
もののけの里へ、ようこそ

わが家はものすごい山奥にある。
市街化調整区域でかつ砂防指定地域にもなっている。

これはどういうことかというと、私の住む町、いや、村には、コンビニやガソリンス
タンドはもちろん、沿道サービス業といわれるありとあらゆるものを作ってはいけな
い、そんな地域なのである。
よって、なにもない村なのである。

うちの家のすぐ横を流れている川には、6月になるとホタルが飛ぶ。
家のまわりにはフキやゼンマイが群生しているし、タケノコなどはいたるところでと
れるので、ありがたくもなんともないのである。

こんな話をすると、「平さんは、大自然を求めて、都会から山奥の別荘にでも移り住
んだのですか?」と、ものすごく好意的な見方をしてくださる読者の方がいらっしゃ
るかもしれないが、私は生まれてからずっとここに住んでいるのである。

要は、ただのものすごい田舎者だと思っていただけたらよいかと思う。
そういうご理解をいただければ、私のファッション・センスのなさも理解していただ
けると思う。

そんな山奥に住んでいるのだからして、都会のみなさんとは違う、いろいろなことが
日常生活の中で起こるのである。

わが家には、ネコが4匹いるのであるが、去年、交通事故を起こしたネコを拾ってき
たので、家の中に4匹と、納屋に1匹、ミルクと命名したネコが住んでいるのであ
る。

なかなかなつかなかった野良猫ミルクも、最近はだいぶ愛想がよくなり、いまだにだ
れもさわらせてはもらえないのだけれど、50cmぐらいまでは近づくことができるよう
になったのである。
納屋に住んでいるミルクは、現在、妊娠中で、6月ごろには出産すると思われる。

そのミルク用にいつもエサを納屋においてやっているのだが、エサがいつも空っぽに
なるのである。
妊娠中なので食欲が旺盛なのかと思い、エサも多めにやるのだが、いつも空っぽにな
るのである。

先日、いつものようにミルクにエサをやりにいき、遠くから見ていると、なんとミル
クともう1匹、見たこともない野良猫が納屋の奥から出てきて、二人でそのエサを食
べているのである。
どうやら、知らないあいだに、私は納屋に2匹のネコを飼っていたもようである。

さらに、である。
先日、夜中にあまりにも納屋のほうが騒がしいと思い、行ってみたところ、なんとミ
ルクのエサをアライグマが喰っているのである。

多くの読者のみなさんは、なぜ、アライグマが?と思われるかもしれないが、いま、
日本全国の田舎は、アライグマだらけなのである。
昔、「あらいぐまラスカル」がブームになったころ、ペットとして飼われたアライグ
マが逃げ出したのか、捨てられたのか、それがいま、日本全国で繁殖して、キツネや
タヌキの生態系を脅かすほどなのである。

アライグマは、見た目はかわいいのだけれど、とても凶暴なのである。
うちの近所では、アライグマが屋根裏に居つき、さらに子どもまで生まれ、飼ってい
るつもりはないのだけれど、アライグマに家を占領されているという家があるほどな
のである。
ある意味、アライグマの里として売り出したほうがいいぐらいアライグマだらけなの
である。
もちろん、アライグマにエサを漁られたキツネやタヌキもよく出没する。

数年前、うちの子どもたちが家に帰ってくるやいなや、「近所で宇宙人が死んでい
る」と大騒ぎをするのである。
万が一、ほんとうならば、これは一攫千金!と喜びいさんで駆けつけたところ、イノ
シシのような、ブタのような、ネズミが1m50cmほどに進化したような、見たこともな
いようなものが死んでいたのである。

これはなにかとキミちゃんに頼み、ネットで調べてもらったところ、ヌートリアとい
う動物なのだそうである。
私も生まれてこのかた初めて見る珍獣で、うちの子どもたちが宇宙人というのも納得
なのである。

もはや、ここまでくればもう、うちの村は「もののけの里」と呼んでもよいかもしれ
ぬ。
いったい、どれぐらいの未知なる動物がうちの村には棲息しているのだろう。
ひょっとして、ツチノコやヒバゴン、ビッグフットと呼ばれる雪男などもいるかもし
れぬ。

こういうふうに考えていくと、うちの村に大きな湖がないのがつくづく残念なのであ
る。
もし、そのような湖があったなら、夜な夜な私はそこに出没し、ひと泳ぎしていたも
のを。
そうすればきっと、「兵庫県の山中で謎のトド男を見た!」、「夜な夜な出現! 直
立歩行するアザラシ!!」ということで、川口隊長がご存命中なれば、必ずや探検隊
を引き連れて来てくれたものを。

この過疎な村の村おこしのために、私はひと肌もふた肌も脱いだものを。
重ね重ね、残念なのである。

2007年5月 5日 00:00