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2007年8月11日
そこまでします!

前回、空しい夏休みの旅行計画の話を書いたところ、ある受講生から素朴な疑問をい
ただいた。
「ホテルの料金って、個人で予約する場合も負けてもらえるのですか?」、と。

世の中には、定価とディスカウント価格というものが存在するが、私は常々、いちば
んバカらしい定価とは航空運賃とホテル代だと思っている。

この二つを利用するのに定価を払っている人は、いったい、どれぐらいいらっしゃる
のだろう?
ホテルの場合、とくにビジネスホテル以外の高価なシティホテルやリゾートホテルほ
ど、定価は有名無実である。

また、海外旅行するとき、正規の航空料金を払う方はまずいらっしゃらないと思う。
たとえば、日本とヨーロッパをエコノミーシートで往復した場合の正規運賃は、平日
で61万4千円となっている。
しかしながら、いわゆる格安航空券なるものを買い求めると、同じエコノミーシート
で同じサービスを受けて、だいたい15万円前後ですませることが可能であろう。

ちなみに、ワンランク上のビジネスクラスの格安航空券でも、50万円程度で手に入れ
ることができるはずである。
定価61万4千円のエコノミー料金は、ある意味、ビジネスクラスより高いのである。
違いはなにかというと、格安航空券は遅くとも2週間前までに手に入れないといけな
いが、正規料金であれば、当日でも買って乗ることはできるということである。

しかしながら、最近はエコノミー・セーバーと呼ばれる正規の航空運賃があり、これ
ならば40万円程度で買える。
では、このセーバーと呼ばれる運賃と正規運賃の違いがなにかというと、搭乗日の変
更がきくかどうかということと、ヨーロッパでの滞在期間である。
セーバーを利用する場合は、3か月以内に帰国しなければならないが、正規料金では
1年以内の帰国であればよいというだけなのである。

ただ、こんな高いエコノミークラスのチケットを買う人は、よほど忙しいビジネスマ
ン以外にはないと思う。
そして、実際はといえば、正規料金でエコノミークラスのチケットを買うと、ほぼ
100%の確率でアップグレードされ、ビジネスクラスになる。
料金からすれば、あたりまえのことだと思うのだが‥‥。

また、ホテルも同様で、クレジットカードのゴールドカードを持っていらっしゃる方
はご存じだと思うが、ゴールドカード割引で3割引から5割引で泊まれる。
さらに、割引で泊まれるくせに、チェックインやチェックアウトの時間を一般のお客
さんより融通してくれることも多い。
つまり、安く泊まれて、オマケが付くわけである。

海外のホテルも同様で、多くの人はインターネットなどの予約で安い金額で泊まられ
ると思うのだが、ホテルに直接交渉しても、あたりまえのようにディスカウント料金
を提示してくれる。

普通、インターネットのホテル予約では、あまりいい部屋に通してもらえることがな
い。しかし、ホテルに直接交渉すれば、当然、ホテルは旅行会社に手数料を払わなく
てすむので、“眺めのよい部屋”かつ“朝食付き”というオマケを付けたとしても、
ソンをすることがあまりないのである。
よって、意外なのだが、直接交渉のほうが、よいレートでオマケを付けてもらって泊
まれることもあるのである。

また、旅行会社が年間契約で押さえている部屋があり、それを団体旅行で埋められな
いとき、部屋を個別販売してくれたりする。
ふだんはやや高めのレートになることが多いが、あまりに埋まらないときは、投げ売
りのようなレートで出していることもよくあるのである。

私は去年、スイスのサンモリッツに行ったときに、五つ星のホテルに泊まったのであ
るが、ツインで1部屋2万2千円ほどであった。
しかし、このホテル、アメックスカードの割引を使ったとしても、クレジット会社経
由では4万2千円もしたのである。

しかも、フロントのおねえさんに、私は姑息にも日本からのおみやげを渡したおかげ
で、アップグレードしてもらったのである。
この種の作戦は、海外では非常によく効く。
もちろん、おみやげでなくても、少々のチップをフロントではずみ、アップグレード
をおねだりするのもよいのである。

あとは、とてもセコすぎるワザなので公表するのもはばかられるのであるが、うちの
事務所からホテルに英語でFAXを入れてもらうという方法もある。
そのFAXにはこう書いてある。

〈うちの社長がおたくのホテルに泊まることになっているはずです。
家族旅行で行っていますが、じつは社員旅行の下見を兼ねております。
私ども従業員一同は、ぜひ、おたくのホテルに泊まりたいと思っておりますが、うち
の社長はあまり乗り気ではありません。
しかし、今回、社長が気に入ってくれて、来年は社員旅行でおたくのホテルに泊まれ
ることを、みんなで夢見ているのです〉

「そんなバカな‥‥」と思わないでいただきたい。
これがよく効くのである。
支配人があいさつにきてくれたりして、名刺をもらっちゃったりして、「明日の朝、
お食事を一緒にどうですか?」なんて言われちゃったりしたこともあるのである。
もちろん、やましいことをしているので、非常にバツが悪い。
「そこまでするか?!」と言われそうなのであるが、そこまでするのである。

しかしながら、子どもが小さいときは、「うちのパパは、なにかすごい偉い人だ」と
思われて、気分もよかったのである。
最近は、「どうせまた、なにかやましいことをしたのだろう」といやな顔をされるこ
とが多いのである。
子どもは成長するものなのである。

日々、あの手この手を考えながら、空しい空想旅行を楽しんでいる今日このごろなの
である。

2007年8月11日 00:00