tairaonsen2.jpg

2007年9月19日
嵐を呼ぶ男(後編)

東京に大きな台風が直撃しているにもかかわらず、私はそんなことはつゆ知らず、な
んとか東京にやってきたものの、次の日、羽田空港と目と鼻の先にある蒲田で足止め
を食らってしまったのである。

「朝からニュースでやっていたじゃないか!」とつっこまないでいただきたい。
べつにきのうの夜や朝に、イエローチェリーやピンクチェリーばかり観ていたのでは
ないということを、あえてここでは言わせていただきたい。

しかしながら、11時20分までにどうしても羽田空港に着かなくてはいけない私が、い
ま、10時45分に蒲田のホテルにいるのである。
どうすればよいのであろう?

手段は一つしかないのである。
京急蒲田駅から電車で行くしかないのである。
この電車はどうやら走っているもようなのである。

しかしながら、私のいるJR蒲田駅の近所から京急蒲田駅までは1キロほどあるのである。
JRが止まっていることもあり、道路は大渋滞。
残された手段は、ただ一つしかない。

この私が、である。
京急蒲田駅まで、重たいトランクをひっさげながら、走ったのである。
人間、火事場の馬鹿力は出るのである。

しかしながら、半分死にながら京急蒲田駅に着いたはいいが、ものすごい人なのであ
る。
切符が買えないのである。
しかも、蒲田・羽田間は時間にして8分ほどで、いつもならしょっちゅう電車は来る
はずなれど、台風の影響で電車が来ないのである。
プラットホームは大きな旅行用トランクを持った人であふれているのである。
この時点で11時を回っていたのである。

不幸にも、私が乗る飛行機は遅れていないのであるからして、もしも、私が羽田空港
に着かなかったら、日本航空の人はきっとこう言うのであろう。
「来ないアンタがいけないんだもーん!」
「運賃は返さないんだもーん!」
「しかも、アンタの運賃は割引だから、ほかの便に替えてあげないんだもーん!」
だからして、私はこの巨体を揺さぶりながら、走りに走ったのである。

11時7分ごろ、ようやく羽田行きの電車が来たのである。
この電車、羽田空港には11時17分ぐらいに着いた。
あと3分である。
しかしながら、この電車の駅からチェックイン・カウンターまでがまた長いのである。

私はたぶん人間の顔をしていなかったと思う。
走りに走ったのである。
世界陸上に出たら、けっこういい記録が出せそうなぐらいがんばったのである。

しかし、私がカウンターに着いたときには11時21分にはなっていたと思う。
自動チェックイン機は時間に正確なので、カードを通してもアッカンベをされるかと
思ったところ、な、なんと、スムーズにチェックインできたのである。
「な、なにゆえ!?」

そう、思い出したのである。
羽田・福岡間は1時間45分もかかるので、この日はアップグレード券を使い、クラス
Jで予約をしていたのであった。
クラスJの最終チェックイン時間は出発の15分前、つまり、11時25分までOKだったの
である。
「おお、神よ!」
思わず、自動チェックイン機を抱きしめてあげたのであった。

なんとかかんとか飛行機に乗ったのであるが、どうもこの日、こんな目にあったのは
私だけではなく、乗客が口々に「ぜったい間に合わないと思った」とか「羽田に来る
のにこんな目にあったのは初めてだ」とか言いあっていたのである。
もちろん、飛行機の中ではまた爆睡した。

さて、2週にわたり、私の苦労話を読んでいただいたわけだが、たぶんみなさんは誤
解されていると思う。
「なんだよー、平は雨男なのか?」とか「平は嵐を呼ぶ男なのか?」などと思ってい
らっしゃるのではないか?

じつは私は、究極の晴れ男なのである。
なんやかんやで、大雨や台風でえらい目にあったことなど人生でほとんどないのであ
る。
それどころか、関西に台風が直撃しているようなときほど、出張でどこかにいたりし
て、台風にはあまりお目にかかったことはないのである。

そこで、私は考えた。
いったい私はなぜこんな目にあったのであろうか?

気になる男がいるのである。
そう、あのネムたそうなことで有名なカウンセラーなのである。
まさかと思い、帰ってからスケジュールを調べてみたところ、その男のスケジュール
にはこう書いてあった。
「9月6日から東京出張」

あやつは究極の雨男。嵐を呼ぶ男なのである。
あと、カウンセラーのNも、ものすごい台風男なのである。
そういえば、こやつも大阪から引っ越して、東京に住んでいるのであったなぁ。

今後、出張のスケジュールは、この人たちの動向をうかがいながら決めようと思った
のである。

2007年9月19日 14:06