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2007年11月10日
ボンジョルーノ、イタリア!

私はいまイタリア人である。
ちょっと前はトルコ人であった。
ちなみに一年前はインド人であった。
しかし、国籍は生まれてからずっと純粋な日本人である。

私はどちらかというと妄想癖の強いマニアなので、趣味の一つである旅行記な
どを読んでいると、すっかり本の中に入ってしまう。
そして、そのときどきで、リサーチしている国の人になりきってしまうのである。

いま、私は妄想の中で南イタリアを旅行中なのである。
かれこれ3カ月は旅行している。

その間、南イタリアに関する本を買い漁ったりする。
ナポリ、ローマ、ソレントやサレルノ、アマルフィ海岸‥‥、ほぼ地図は暗記した。
カプリ島やイスキア島に“どこでもドア”で急に連れていかれたとしても、迷
うことなく街を歩ける自信はあるのである。

よって、イタリア人である私の最近の食生活では、スパゲッティが圧倒的に多い。
オレンジジュースも、ブラッド・オレンジジュースという赤いジュースを好んでいる。

半年ほど前、トルコ人であったときは、家で急にケバブやシシカバブーといわ
れる肉料理を食わせろとダダをこね、奥さまを困らせた。
1年前、インド人であったときはチャイに異様にハマり、スタバに行って、チ
ャイばかり飲んでいたのである。

そんな、なんちゃってイタリア人になっているこの私が、先日、大阪の事務所
のある江坂を歩いていたとき、“トラベルカフェ”なるものを発見したのであ
る。

「トラベルカフェとは、なんぞや?」と思い、立ち寄ってみたところ、旅行の
パンフレットや旅行誌なんかがいっぱいおいてある、日本航空が経営している
喫茶店なのである。
しかも、旅行相談デスクなるものまであるのである。
そのデスクの横で、あるパンフレットを見つけてしまったのである。
『専用車で回るイタリア旅行』。

最近、私はイタリアと名のつくものなら何でも飛びついてしまうのである。
それはまるで、子猫の前にボールを転がすようなもので、イタリアと名のつく
ものすべてに飛びかかる習性がある。

そのパンフレットは、「ゴージャスなベンツやリムジンなどで、イタリアを観
光しませんか?」というものだったのである。
「おお、なんと素晴らしい!」

しかしながら、そのパンフレットには値段表がなかったのである。
もちろん、こういうパンフレットには要注意である。
それはまるで、“時価”としか書いていないような寿司屋に入るがごとく、勇
者にしかその値段は聞けぬのが日本の常識であろう。

しかし、私はその旅行相談デスクで、聞いたのである。
「すいません。このパンフレットには値段表がないのですが、おいくらぐらい
なのですか?」と。

すると、係のおねえさんは、たしかに私の頭の先からつま先まで見回したのである。
そう、たしかに、その日の私はいつものように貧乏くさいいでたちであった。
しかし、以前にも書いたように見栄っ張りなので、おねえさんのその態度が私
の対抗心を刺激したのである。

「お客さま、これは当社でホテルとセットにしております商品でございますの
で、よろしかったら、お見積もりをお出ししましょうか?」
おねえさんは慇懃無礼に私を見下すのである。
ある意味、さすがプロ。
見る目はあるようである。

そして、一枚のホテルリストを取り出してきたのだが、そのリスト、ものの見
事に超一流ホテルしか載っていないのである。
「お客さま、いつごろ、どちら方面に行かれるのですか?」と私に聞いてくる
のである。

はっきり言う。
まったく予定などない。
しかし、ここでウロたえてしまえば、相手の思うツボなのである。

「来年の3月の終わりごろに、家族で南イタリアに行きたいんですよ。
アマルフィ海岸と、カプリ、イスキア島、そして、ローマもついでに‥‥。8泊で」
そして、ホテルリストを見ながら、私は「うーん」と考え込んだのである。

「ねえねえ、アマルフィ海岸でイル・サン・ピエトロのホテルはないの?
それと、カプリ島でカプリパレスは載ってないよね。
ローマではハスラーにいつも泊まってるんだけど、このリストには載ってないね。
別注文はできるのかなぁ?」

もちろん、いつもどころか、ローマになんか行ったことないのである。
いま言ったホテルは、ぜんぶ本で読んだホテルである。
ちなみに、どれも皇室御用達のとびきり超一流のホテルばかりなのである。

しかしながら、係員の態度はおもむろに変わったのである。
「ご予算は?」という非常にシビアな質問がきたので、3秒以内に「たぶんこ
れぐらいはかかるであろう」という予算を計算し、「250万以内で」と大ボラ
をこいたのである。
すると、「1週間以内にホテルにリクエストをとって、お見積書をお送りしま
す」と言われ、コーヒーまで出していただいたのである。

まだ、その見積書は届いていないのだが、後日、送ってもらうべく、私はその
担当者に名刺を渡してしまったのである。
ただひたすら、その担当者がこのブログを見ていないことを祈っている毎日な
のである。

2007年11月10日 00:00