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2007年12月26日
約束の地をめざして Part2

日本航空の国内線ファーストクラスに初めて乗ることになった私は、ヒーリングワーク明けの月曜日だったのにもかかわらず、朝シャンをし、ひげの深剃りまでして、羽田空港までやってきたのである。
しかし、憧れのダイヤモンド・プレミアム・ラウンジに入ったはいいが、普通のラウンジと大差なく、失望してしまったのである。
そして、さらなる希望を求め、私は旅立ったのである。

さて、日本航空のサファイア会員である私は、さくらラウンジと呼ばれるラウンジに入れるのである。
しかしながら、このラウンジにはさらに秘密の扉があり、その先はダイヤモンド会員様専用のプレミアム・ラウンジなのである。
「扉の向こうは、いったい、どうなっているのだろう?」と、私は常々、悔しい思いをしてきたのであるが、きょう、ようやく、その扉の向こうに入れる日がきたのである。


受付のおねえさんにファーストクラスの航空券を提示し、ダイヤモンド・プレミアム・ラウンジに案内されたのである。
当然、だれだって、思うじゃないですか。
ドアが開けば、少なくとも左右にバニーちゃんがいてくれて、「平様、お待ちしておりました」と深いお辞儀をしてくれるものだと‥‥。

しかし、扉の向こうにはだれもいないのである。
そして、狭い普通のラウンジがあるだけなのである。
「え‥‥?」

あたりを見回してみても、サンドイッチはないのである。
ただ、普通の制服を着た‥‥、ふたたび、はっきり言わしてもらう、おばちゃんがウロウロしているだけだった。
ここでもまた、食い物といえば、のど飴とおかきのおつまみセットだけなのである。
唯一のいい点は、いつものラウンジでは取り合いになるスポーツ新聞が、ここではラクラク読めることぐらいであった‥‥。

11時30分発の飛行機に乗るのに、私は10時には羽田空港に着いていた。
このダイヤモンド・プレミアム・ラウンジで、ゆっくりバニーちゃんとの会話を楽しむために‥‥。
にもかかわらず、ヒマでヒマで、することがなんにもないのである。
「うぅ‥‥。1年以上も憧れ続けていたのに‥‥」

こうなったら、機内でのファーストクラス・サービスに期待をかけるしかないのである。
8,000円も払っているのだからして、できるだけその座席には長く座りたいと思うのである。
ファーストクラスのお客様には優先搭乗というのがあり、一般のお客様より早く飛行機に乗せてもらえるのである。
だからして、11時10分の搭乗開始のとき、私はいの一番に並び、いの一番に飛行機に乗ったのである。

そして、そこには、写真でしか見たことのなかった、あの本革張りのとても優雅な座席があった。
しかも、スリッパ付きである。
「おお、懐かしい!」

昔、日本航空にスーパーシートと呼ばれる座席があった時代、このクラスには軽食や食事とともに、この専用スリッパが付いていたのである。
たしか、当時は、通常料金に4,000円程度上乗せすればこのスーパーシートに座れたので、沖縄に行ったときに利用したことがあったのである。
優雅な旅であった。
もちろん、これは機内では使わず、息子へのおみやげにすることにした。

そして、座席に着くやいなや、メニューが配られたのである。
「お飲み物は、なにになさいますか?」
当然、シャンパンである。
なにぶん、8,000円も払っているからして、モトをとりたいのである。

私の隣に座っているお金持ちそうなおじさんは、シャンパンも頼まず、寝ちゃっているのである。
思わず、「シャンパンですよ」と起こしてあげようかと思ったのであるが、「きっと、本物のお金持ちとは、ファーストクラスでこのようなふるまいをするのであろう」と思い、そっとしておいてあげた。
ただ、本物のお金持ちならば、「私の分のシャンパン、飲んでいいですよ」と、なんでひとことかけてくれなかったのであろうかと、ファーストクラスの座席で貧乏な発想をしてしまったのである。

軽食は、メニューの中でいちばん高そうに見えるお弁当にした。
しかし、お弁当は、飛行機が上空にたどり着いて、水平飛行になってからでないと持ってきてもらえないのである。
しかしながら、シャンパンなんか飲んじゃって、とっても座り心地のいい椅子に座ると、セミナー明けの私には、睡魔という悪魔が忍び寄ってくるのである。

しかしながら、ここでついうっかり寝込んでしまった暁には、お弁当が食べられないのである。
たぶん、スチュワーデスさんは起こしてくれないのである。
そして、言うのである。
「ゆっくりとお休みでしたので、サービスは控えさせていただきました」、と。

それは違うぞ、日本航空!
しっかり起こしていただき、お弁当を私に与え、少しでも8,000円のモトがとれるようにしてくれることが、私への真のサービスというものなのだ。

しかしながら、それをスチュワーデスさんに頼む勇気は私にはないのである。
せっかく快適な座席に座りながら、なぜ私は太ももをつねったりしていなければならぬのであろうか?

その後、お弁当をしっかり食べたのだが、ファーストクラスの旅は、私にとっては、気を遣ってばかりでとても快適とは言い難かったのである。

ちなみに、帰ってからも、「ファーストクラスに乗った」とは奥さまに言えず、ビクビクしながら日々を過ごしているのである。
ただ、もったいなくて捨てることのできないスリッパだけが、いまだに行き場を失い、トランクの中で約束の地を求めてひっそりと眠っているのである。


今年も1年間、ご愛読いただき、ありがとうございました。
次回は、来年1月12日に更新の予定です。
来年もよろしくお願いいたします。  よいお年を!


2007年12月26日 19:15