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2008年3月15日
専門家らしく

テレビに出る羽目になった。
番組名は「スリルな夜?イケメン合衆国?」という深夜番組である。
この番組は、「イケメン合衆国」というサブタイトルがついているように、出演者の芸人さんもチュートリアルの徳井さんだけとか、フットボールアワーの後藤さんだけ、アンジャッシュの渡部さんだけ、おぎやはぎの矢作さんだけというようにイケメンばかり集めて作っている番組なのである。
その番組で、カウンセラー界一のイケメンカウンセラーを募集しているということで、私に出演依頼があった、という事情は、もちろん一切なかったのである。


テレビの世界には、番組を作る制作会社というテレビ局の下請け会社が無数ある。
そして、この制作会社があの手この手といろんな企画をつくり、テレビ局に売り込みに行って、番組を作っているのである。

その番組を作る企画段階で、よく私のところに相談の電話がかかってくるのである。
昨今のバラエティ番組は何かと心理学的な要素を取り入れたものが多い。
そのため、いろんな制作会社の人たちが「こういうことは心理学的に言えますか?」とか、「こういうふうな番組を作りたいのですが、心理学的に無理はないでしょうか?」などと意見を求められることが多いのである。
また、さらに一歩踏み込んで、「番組にカウンセラーを出してくれませんか?」というお問い合わせもよく来るのである。
しかしながら、この種のお話はすべて企画段階での話なので、ボツになったり、変更になったりすることが多いのである。
10本お問い合わせをいただいたとしても我々が相談に乗らせていただいた企画が、実際に番組になるのは、1本あるかないかぐらいなのである。


今回も「芸人さんの自論を専門家チームに科学的に心理的に検証してもらうという企画をやりたいのだが」というお問い合わせの電話があったのである。
いつもは、何度かの打ち合わせがあった後、電話が途絶え、ボツになることが多いのだが、今回はどんどんどんどん意見を求められる回数が増え、ついにディレクターの方が大阪までやって来られたのである。
熱心な制作会社だなぁ、と思ったものの、しょせんは深夜番組なので、安心していたのである。
なぜならば、みなさんが思っていらっしゃる以上にテレビ番組の制作会社はどこもすごく貧乏なのである。
ましてや、我々がよくお世話になる深夜番組では、もともと予算がそんなにないので、いくら相談に乗ろうが、ギャラなんかもらったためしがないのである。
さらに、今回は、フジテレビという東京のテレビなので、関西に住んでいる私は、まったくもって気が楽だったのである。
天下のフジテレビといえどもしょせんは深夜番組、大阪からの交通費を出せるほどの予算はなかろうとタカをくくっていたのである。

しかしながら、どんどんどんどん相談に乗っている間になぜか丸め込まれてしまい、最終的には、「撮影が夜になってしまいますので、お台場にホテルを用意いたします」というひとことで私の心が動いたのである。
このブログの賢明な読者のみなさまならば、私がホテルに詳しいということは、ご存知であろう。
お台場にあるホテルは、2つしかないのである。
一つは日航ホテル、もう一つはメリディアン、どちらにしても超一流ホテルなのである。「おー、ぜひとも泊まってみたい・・・」
私はホテルにつられ、ついにタブーを犯してしまったのである。
なぜタブーなのかは、このブログ参照。


今回の企画は「芸人さんが、それぞれ自分の経験から、女性に関する自論を科学的に検証できるのか?」という企画で、私は、それを検証する専門家チームとしての出演なのである。
我々専門家チームには、女医で有名な西川史子先生、高須クリニック院長の高須克弥先生、そして、最近顔が私と似ているのではないかという噂のある、朝青龍の顧問医師である本田先生などの、顔ぶれなのである。
さらになぜかデヴィ夫人婦人を加え、芸人さんたちの自論を専門家として実証できるのかどうかをコメントしていく番組なのである。


この種のスタジオ収録の番組では、我々の座っている正面には多数のテレビカメラがあり、そのテレビカメラの下には必ずディレクターさんがいて、色んな指示をカンペに書いて出してくるのである。
そして、私はこのカンペにものすごくトラウマがあるのである。
昔、バラエティ番組に出たときのことであるが、そのときは専門家が私一人であったので、いろんなタレントさんや芸人さんの意見を一人で裁かねばならなかったことがあったのである。
私の性分としては、バラエティ番組なのだから「笑いを取りたい」「ボケたい」のである。そして、その番組でも、結構、笑いをとっていたのである。
しかしながら、テレビ番組の世界では、そういうことをするのは当然ながら芸人さんの仕事なのである。
制作側としては、専門家である私に「笑い」はまったく求めていないのである。
その番組が、異様に盛り上がったとき、私の目の前のテレビカメラの下でディレクターがカンペを見せるのである。

「専門家らしくしてください」

そのカンペを見せられて以来、私はどうしていいのかわからず、固まってしまったのである。
どうやら私が一番苦手としていることは、カウンセラーらしくすることのようである。
いったい私は何者なのであろうか?


2008年3月15日 18:27