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2008年7月26日
切手少年

最近、わが家にも平和が戻ってきたのである。
毎日、とても爽やかな朝を迎えることができるのである。
それは、子どもたちが夏休みになったからなのである。

私が家にいるかぎり、平日なら、毎朝必ず、午前7時に娘を駅まで送り届けなければならなかったのである。
ところが、夏休みに入ったので、早起きせずに、ゆっくり寝られるのである。
とっても至福なのである。
夏休み中もクラブ活動があるので、学校には行っているのだが、ゆっくりでいいので、とても平和な朝を楽しめるのである。

うちの息子は、私が通っていたのと同じ学校に通っているのだが、その息子の様子から、とても長い間忘れていた昔のことを思い出したので、きょうはその話をする。

私の通っていた学校は私立で、中高一貫教育の男子校であった。
私は中学校に入ってすぐ、剣道部に入部したのである。

その剣道部では、高校3年生の部員も同じ部室にいるのである。
小学校から上がり、中学1年生になりたての私は、田舎の少年であったので、超ウブであったのである。

ところが、学校は男子校であり、高校生もたくさんいるので、部室にはいろんなブツがあるのである。
でも、私には、その意味がわからないのである。
「おかしいなぁ。この女の人、なにか悪いことをしたのかなぁ。裸で縛られているぞ」としか思わないのである。

しかしながら、そんなふうにウブであった私も、高校生になるころには、そういうブツを供給する側に回るわけである。
それは、なんというか、あの‥‥、その‥‥、もちろん、自分の欲求のためではなく、かわいい後輩の教育のために、使命感に燃えてする行為なのであるということを、あえてここで言わせていただきたい。

時代はいまから35年ぐらい前の話なので、ブツの入手には、なかなか困難を極めるのである。

当時は、男性週刊誌の広告の欄に、いろいろな広告が出ていたのである。
「私のとてもハズカシイ写真、切手300円分を同封していただければ、あなたのもとに送ります。キャ?」などという広告である。
当時は、なぜか、お金を直接送るというよりも、切手で支払う方式が多かったのである。

もちろん、後輩のために、送ってみた。
ドキドキしながら待つこと1週間、いよいよブツがわが家に届いたのである。
そして、その「とてもハズカシイ写真」とは、女子高生らしき人が0点のテストの答案用紙を持ったものだったのである。

た、た、たしかに、広告に偽りはないのだけれども‥‥。
「悔しいです!」

また、「からみあう裸体! 豊満な乳房! 飛び散る汗! 組んずほぐれつ、四十八手写真集」。これには、800円分の切手を損した。
こんどは大丈夫だろうと期待したのだが、送られてきたものは、たしかに写真集ではあったのだが、「大相撲四十八手?技の大図鑑」というシロモノであった。

たしかに、これも広告に偽りはないのであるが‥‥。
鼻息を荒くしている後輩たちに、どう言いわけすればよいのであろう?

また、今度こそは必ず大丈夫だ!と思ったにもかかわらず、やられてしまった広告に、「ボカシなし! 激写! 黒光りする激しいピストン運動、モロ見え!」というのもあった。
これには、ものすごく期待した。
しかし、送られてきたのは、蒸気機関車の写真だったのである。

たしかに、なんのボカシもなく、とても上手に撮れていた写真だったのであるが‥‥。
これでは、興奮はできないのである。

すっかりくじけてしまった私は、その後、戦略を変え、ヒサヤ大黒堂の「痔のクスリの試供品を無料で送ります」という広告に、友だちの名前でハガキを出したりして遊ぶのが精一杯だったのである。

当然、身に覚えのない友だちは、おかあさんから、「そういうことなら、早く病院に行きなさい」とか言われるのである。
「オレ、大丈夫だよ!」と答えても、おかあさんは、「恥ずかしがってる場合じゃないでしょ!」と聞く耳を持たず。
そんないたずらばかりして、遊ぶしかなかった時代だったのである。

はたして、うちの息子も、そんなことをして遊ぶのであろうか?
親心として、せめて切手だけは十分に買っておき、引き出しの中に入れておいてやりたいと思うばかりなのである。

2008年7月26日 00:00